溜め息

紫風子

2017年03月07日 17:50

 夕焼け空を眺め、何故か漏れ出る溜め息。

 心の翳りと相対せざるを得ない憂鬱。

 煙草の箱を覗き、心許ない本数を確認。

 財布の中身を確認し、もう一度、溜め息。

 幸せが逃げてゆくわけじゃない。

 不幸が寄って来るわけじゃない。

 ただ、ただ、軽い気持ちで漏らした溜め息。

 絶望に暮れたつもりになれば少しは楽だから。

 性行為よりも接吻が好きだと告げたことがあった。

 その時、君が浮かべた失望の顔を覚えている。

 そんな懐かしき思い出を振り返り、溜め息。

 溜め息。

 溜め息。

 漏らし続けて、喘ぐ息。

 送り仮名を消したら『喘息』。

 咳き込みながら溜め息を漏らそうとして、失敗。

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