残像に接吻

紫風子

2017年09月26日 18:40

 不意に過ぎった微かな記憶が、
 鋭利な刃物のように胸へと突き刺さる。

 思い出そうと躍起になって。

 思い出せずに短気になって。

 手を伸ばせど残像を残したまま記憶は薄れ、
 曖昧な感情が波紋のように広がってゆく。

 愛しい輪郭。

 広がって、そして消える。

 堪らない気持ちなのに掴めなくて。

 私は面影を取り戻すように、
 空虚な心に指を入れ、

 残像に接吻する。

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